北海道大学大学院の博士課程の男性が「寄生虫に感染された魚は釣られづらくなるか」ということをテーマに研究を重ね論文が発表されました。
釣り人にとって非常に興味深い内容だったので詳しくこちらでお伝えします。
閲覧注意です。記事内には一部苦手な方には少しグロいと思われる画像が含まれます。
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素朴な疑問に本気で挑んだ研究
実際に研究を行ったのは、北海道大学大学院の博士課程2年生の長谷川稜太さん。
研究室のブログでもご本人が”小学生の自由研究のような内容です!(笑)”とおしゃっておられ、
釣り人にとって何気なく出てくる素朴な疑問に、本気で挑んだかたちとなっています。
長谷川さんはまた、「素人的な発想の研究が意外に行われていないところがサイエンスの面白さ」だともおっしゃっていて、
魚の寄生虫が釣りやすさ、釣られにくさなどに影響するのかどうなのかということには、これまで全く着目されていなかったそうです。
そこで北海道函館市郊外の渓流において、長谷川さんご自身がイモムシを餌にエサ釣りし捕獲、釣れなかったイワナは魚類調査ために電気ショックを使い麻痺させて捕獲した。禁漁区で特別な許可を得て行われました。
4日間でとられた研究サンプルは、延べイワナ312匹が研究に採用されました。
サルコンミーラとは
今回実際に釣りをしたりして捕獲された対象となった魚は、渓流にいるイワナとイワナの口に寄生するサルコンミーラと呼ばれる寄生虫です。
頭についた突起物をイワナの口の中の皮下に差し込んで固定し、下に2本脚のようにみえるものが卵塊が入った袋だそうです。
なんだか不気味なこの寄生虫は、こんな形をしていますがエビやカニと同じ甲殻類です。
私たちがよく知る寄生虫は、ミミズののような形のアニサキスのようなものだけを想像してしまいますが、それだけではないのですね。
仮説とは違った研究結果
We found that infected fish were less vulnerable compared with non-infected fish when the fish body condition was low, which was probably due to reduced foraging activity. On the contrary, infected fish were more vulnerable when the host body condition was high, probably due to the compensation of parasites’ negative effects.
出典:Hasegawa R and Koizumi |The Science of Nature – Naturwissenschaften, 110, 10
最初研究に取り掛かる前に長谷川さんが立てた仮説は、「寄生虫に感染された魚は釣られづらくなるか」でした。
寄生されて食欲が落ちたり、口の中に寄生されることで捕食しにくくなるのではと考えていました。
けど研究結果は、エサ釣りで釣ったイワナと、電気ショックで捕獲したイワナを比較すると、
寄生虫に感染した感染率にほぼ違いがありませんでした。
ただし、体長の割に重さが軽い、重いのかの肥満度で分析していたところ、
肥満ではない痩せた個体は寄生された魚のほうが釣られにくくなっていて仮説通りだったが、
太っている個体は、逆に寄生されたほうが釣られやすくなるという研究結果になりました。
長谷川さんによると「太っていて体力があるイワナは、寄生虫に搾取されたエネルギーを取り戻そうと果敢にエサを食べるのでは」と考えるられるそうです。
釣った魚に寄生虫がいるのは、ちょと頂けないが…
釣りやすくなる個体が太くて良型ならば釣り人にとっては良いことかもしれませんね。